便利さとともに失うもの
コンセンサス(合意)とシンパシー(共感)について
もう15年ほど前の話になろうかと思います。
そのころ、視力と聴力の不自由を重ね持った人の、生活支援団体があまりありませんでした。「視力障害」と「聴覚障害」の両方のスキルを持った、生活支援するグループの設立が必要でした。ちょうどその頃、大変深刻な状況を生きていた人が、何人か亡くなった事もあり準備会をへてグループが設立されました。
会議地となった○△県の△□市は、県の中では南西に位置し、障がい者を含めた会議には、「移動介助」と「通訳(筆記・手話)」が必要で、予定の確保と会議の決定レスポンスを保つことが大変でした。
私たちは、「生活情報機器補助金制度」等で、障がい者家庭・支援者家庭へパソコンとインターネットの普及をすすめ、「FAX」「メール」と「メーリングリスト」(メール自動一斉配信システム)等を使い、協議の進展を加速する試みを始めました。
そのころの厚生省や県情報福祉課も理解を示し、IT化の「e-japan構想」を順風に活動しやすい状況が生まれました。具体的には、団体設立から日が浅くても「モデル事業」等の採択を受けることも出来ました。
しばらくすると私は困った悩みを持ちました。同じ障害のあるかたたちの中で、ITつまり、パソコンに急速に”慣れてゆく人”と、”使いこなせない人”、パソコンを”手に入れることが出来ない人”がいることに気づきました。
県下の大企業K社が30台中古パソコンを寄与してくださり、その配布をしても今度は”指導できる人材”が不足していました。そして、パソコンのような機器の”嫌いな人”もいるのです。
そうこうしているうちに、”IT技術をうまく使いこなす人”と、”使わない人”との「情報格差(デジタルデバイド)」が、しだいに確実に広がってゆきました。IT環境を作れた人は、先進的な活動に気持ちが進み、地域の大多数の人はそのまま団体の何の恩恵もうけることなく、また、団体は問題をあまり大きく感じず、何ごとも無いように代表者団体として存在して行ってしまうのです。危惧を抱いた支援者たちはだんだんと去ってゆき、危惧を示唆する者は煙たがられてゆくといった状況になってゆきました。
自己のための環境を作ることを誰もが阻むことは出来ないわけですが、公的団体としての存在の仕方として支援する気持ちになれず、私も運営から辞任しました。
なにが出来て何が良かったのか釈然のしないままですが、悔いを残しつつ、教訓として私にはとても貴重な経験でした。
「歩幅」をどのように厚く合わせてゆくのかというような点に留意できる人がいないグループでは、グループ自体の「コンセンサス(合意)」が薄らぎ、まわりからは「求心力」や「魅力」が薄らぎ、グループの力そのものが希薄になって行ってしまう気がします。
”便利さと引き換えに、失ってゆくかもしれない負の可能性”にも設計感性が必要なのではないかということを、もっとIT企業でも掘り下げる必要があると感じています。
こういった考え方も出来ます。
IT化を急がなければ、見えるような機動力進化はゆっくりかもしれませんが、地固めというか組織内のシンパシー(共感)密度は高くなってゆくのかもしれないというようなことです。仮に、ネットワーク内で謝意を示すことは、メールで伝えることでひとまず済んでしまいますが、ネットワークがなければ出向いて面前で謝意を示すはずです。やはり気持ちを伝えられるのは後者だと思います。こういったことが便利さのリスクだと思います。設計イメージを両極で持たないとリスクが見えなくなってしまうというような懸念です。
お客様企業に支社4社をつなぐネットワークでのグループ化を提案したことがあります。でも採択されませんでした。社員全体のITレベルが低いから、「一気の導入は、社員を大切にする我が社の理念に合わない。そのためにIT化が遅れても、あとで後悔することもあるかもしれないけれど、我が社は社員に歩幅を合わせる。」ということでした。私は残念であるとともに、この会社のエグゼクティブ(社の頭脳)を素晴らしいと思いました。そして今も、お付き合い頂いております。
時間の便利さと引き換えの、つちかってみえたヒューマニティでの損益をみぬき、しいて、スロー(ゆっくり)というリスクを選択されたのです。
レスポンスとかがとかく選択されがちのこの頃では、逆に、こうういったころが企業として選ばれるValue(値)・信頼性を生んでみえるのかもしれません。
Aという会社の例が、B社に当てはまるというステロタイプ的な設計は、効力をあまり持たなくなるのではないか。
その”会社の内なる力を引き出すような設計感性”が必要で、それを機動する「情報」・「技術」「運営力(コントロール)」がなのではないのだろうか。
大きくとらえると、
”経験を設計して行くような考えかたから”、本当のものが出てくるような気がするのです。
コマーシャル・宣伝活動・ホームページ・企業内情報システム・グループのセグメント・協議においてもです。
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